デビットスプレッドに注意!米国株オプションの思わぬ落とし穴

あなたは米国株オプションの取引を開始しようとした際に、まずはリスクを抑えたデビットスプレッドを試してみようと思っていませんか?

デビットスプレッドとは、売りオプションと買いオプションを組み合わせたスプレッドトレードです。
損失限定で少ない資金量でトレードが出来るため日経225オプション市場でも人気がある戦略です。

ところが、米国株オプションで日経225オプションと同じようにデビットスプレッドを実行すると、思わぬ落とし穴に陥る可能性があります。

その落とし穴とは、損失限定のスプレッドトレードをしていたはずが、いつの間にか売りオプションが解消されて方掛けのトレードとなる場合があります。
さらには多額の証拠金を要求される場合があるのです。
しかもそれは含み益が出ているときに起こります。

原因は満期タイプがアメリカンタイプだからなのです。

この記事ではオプションの2つの決済タイプと満期における現物株の引き受けルール、そしてデビットスプレッドを組み権利行使された際に必要となる資金について解説します。

オプションの満期タイプ

まずオプションの満期タイプを理解しましょう。
2種類あり、アメリカンタイプとヨーロピアンタイプです。

アメリカンタイプ

アメリカンタイプとは、いつでも権利行使が出来るタイプのオプションです。

買い手

オプションの買い手は自身が権利行使したいタイミングで権利行使できます。
買い手のメリットがあれば権利行使できますし、権利行使しないで保有し続けることも選択できるので、イニシアチブがあると言えます。

売り手

一方のオプションの売りポジションは誰かが権利行使した場合には、否応なく応じなければいけない義務を負っています。

もしあなたが売りポジションを保有していた場合には、インザマネーになると権利行使(割り当て)される可能性が高まります。
オプションの買い手全員が必ず権利行使するわけではありませんので、インザマネーになっても必ずしも割り当てが発生するとは限りません。
オプションの買い手の権利行使に対して、抽選で当選した人のみが割り当てになり義務を履行しなければいけません。

アメリカンタイプではインザマネーになって権利行使されると必ず現受けと呼ばれる現物株への転換(スポット取引)が発生します。

オプション自体の満期も設定されていますので、もし誰も権利行使せずに満期を迎えた場合にも現物株へ転換されます。

アメリカンタイプで権利行使された場合

コールオプションの買いポジションを保有していて権利行使した場合には、現物株100株を保有(ロング)した状態になります。

一方のコールオプションの売りで権利行使された場合は、現物株100株を空売り(ショート)した状態となります。

プットオプションの買いを権利行使した場合は現物株100株を空売り(ショート)した状態となり、プットオプションの売りで権利行使された場合は100株を保有(ロング)した状態となります。

  • コールオプションとは「買う権利」、プットオプションとは「売る権利」と呼ばれていますが、下記のように分類することが出来ます。
  • コールオプションを買う=「買う権利」を買う=100株でロング出来る権利を買う=100株でロングするかしないか期中に選択できる
  • コールオプションを売る=「買う権利」を売る=100株でロング出来る権利を売る=100株でショートする義務を負う=割り当てになると100株でショートしなければいけない
  • プットオプションを買う=「売る権利」を買う=100株でショート出来る権利を買う=100株でショートするかしないか期中に選択できる

プットオプションを売る=「売る権利」を売る=100株でショート出来るする権利を売る=100株でロングする義務を負う=割り当てになると100株でロングしなければいけない

ぜひこの区別は暗記ではなく理解しておきましょう。

この「プットオプションを売る」という選択が株式投資の発注方法である「安い価格での指値」と経済効果が一緒であるため、あらかじめオプションプレミアムを受け取って有利に投資を始めようという内容を「プット売り」銀投資を始める前にすべきことは1つだけで紹介しています。

プットオプションが割り当てになり100株ショートポジションを保有した場合に、ただちにコールオプションを権利行使して100株のロングポジションを保有すれば、両建て状態となり株式ポジションは消滅します。

ヨーロピアンタイプ

一方のヨーロピアンタイプの代表的な例は日経225オプションであり、満期である毎週第2金曜日の寄付きで一斉に権利行使されるタイプとなります。

ヨーロピアンタイプは期日前に権利行使が出来ませんので、インザマネーになっていても割り当てされることが無くSQ日まで保有し続けることが出来ます。

ヨーロピアンタイプでは現受けしないで差金にて決済される差金決済(キャッシュ取引)が採用されています。

デビットスプレッドに適しているタイプ

この2つのタイプのうち、デビットスプレッドに適しているのはヨーロピアンタイプです。

つまり、アメリカンタイプである米国株オプションはデビットスプレッドを実行しにくいのです。
厳密に言うと、アメリカ企業の個別株オプションや先物オプションが対象となります。
指数オプションはヨーロピアンタイプです。

アメリカンタイプでも、アウトオブザマネーに徹してデビットスプレッドを使っていれば問題ありませんが、アットザマネーと呼ばれる権利行使価格が原資産価格と同じ価格帯にいるオプションを利用する場合にはアメリカンタイプは不利になります。

デビットスプレッドとは方向性を当てに行く戦い方になります。
そこでアットザマネーを使うデビットスプレッドを行った場合に、思惑通り方向性が当たるとコールの買い玉もコールの売り玉も両方ともインザマネーになります。

実はデビットスプレッドで満額の利益を出すには、両方がインザマネーになった状態で満期を迎える必要があります。

しかしながら、米国個別株オプションはアメリカンタイプのオプションです。

満期前に売り玉が権利行使されると、現物株に変わります。
すると現物株を保有するための資金を要求されます。
損失限定で資金量が少ないことから採用したはずのトレードなのに、否応なく請求されます。

Apple株による証拠金算出事例

では、そのアメリカンタイプの事例としてApple社の個別株を用いて資金の増加分について確認しましょう。

例えばコール93ドル@1.5の買い玉とコール94ドル@1.0の売り玉のweeklyオプションによるデビットスプレッドなら、必要な資金は50ドルで済みます。

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わずか1週間後の方向性を当てに行けばよい取引を約5,000円前後で実施でき、方向性が当たれば利益は5,000円を見込むことが出来ます。
最大損失は組成時に差し出した5,000円のみです。

証拠金は発生せずに(表示上1ドルの拘束)自己資金が減っているのが分かります。
(下図はC29とC93にて組成したデビットスプレッド)

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ところが、売り玉が権利行使をされると100株のショートポジションがポートフォリオに加わり損失限定ポジションではなくなります。

仮にApple株のコール93ドルを1枚売っていると想定して証拠金を算出します。

売り玉の割り当て時

売り玉を保有している場合にに権利行使されると、93ドルで100株をショートした状態となります。
よって93ドルの個別株のショートポジションを持つための資金が必要となります。

93ドル×100=9,300ドルが自己資金として必要です。

しかしながらインタラクティブブローカーズ証券(IB証券)の場合は資金の半額を証拠金となりますので概算で、93ドル×100÷2=4,650ドル程度が必要証拠金となります。

シミュレーション結果では2802USDとなりました。こちらはザラ場で25%、オーバーナイトで50%となりますので、現在保有した時の証拠金が表示されています。

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一方の買い玉の権利行使は買い手の権利なのであなたに行使権があります。
権利行使してもしなくても構いません。

しかしコールの売り玉については、もし相手が権利行使した場合には応じる義務があります。

つまりアメリカンタイプの場合は、あなたの売り玉の反対にいる買い手が権利行使することで、売り玉が現物株ショートポジションになってしまい、買いオプションのみ残ることになります。

そうするとコールオプション買い1枚と、現物株のショートポジション100株をポートフォリオとして保有していることとなります。

証拠金の増加

売り玉が割り当てになると、これまで50ドルしか証拠金を要求されないポジションが5600ドル近く要求されるようになります。
これがアメリカンタイプのオプションで気を付けなければいけないことです。

この場合にただちにコールオプションを権利行使して100株のロングポジションを保有すれば、両建て状態となり株式ポジションは消滅します。
しかしロングポジションにするのには証拠金(自己資金)が必要となるので、権利行使するにも自己資金が無いと権利行使することさえできないのです。

またこの両建ての行為は自動発注出来ないので、相場を自分でチェックして実行することになります。
アメリカ市場は日本では夜中に動いていますので、リアルタイムでチェックしていることが難しいかもしれません。

よってアメリカンタイプのデビットスプレッドは方掛けになるリスクを保有している戦略となります。
そして方掛けになるとリスクが限定的ではなくなるので、必要証拠金が上昇します。

買い玉のSQ日

めでたくデビットスプレッドの利益が出る価格になりSQ日を通過したとします。

C93をロングしてC94をショートしているときに、価格が93.5だとします。
その状態では、ショートしているC94は消滅しますが、ロングしているC93は割り当てになります。
否応なく権利行使するタイミングがSQ日になりますので、権利行使するかしないか決められるオプションの買い玉でもこの日を通過すると強制的に権利行使されます。

C93をロングしているということは、100株のロングポジションが立つことになります。

もしC94のショートも割り当てになっていれば相殺してポジションが無くなりますが、C94が満期に消滅した場合には100株のロングポジションだけが残ることになり、証拠金を要求されます。

このようにSQ日を通過させる戦略を取る際には建玉が残ってしまうリスクを持っているのです。

権利行使されないためには

売りオプションだけ権利行使されてしまうことを防ぐには3通りあります。

  • ヨーロピアンタイプのオプションを選定する
  • インザマネーにならない権利行使価格を選定する
  • 権利行使されないうちに反対売買する

ヨーロピアンタイプの場合は満期のSQ日に一括で差金処理して決済しますので、方掛けになる心配がありません。
一番安心なのはヨーロピアンタイプの銘柄でデビットスプレッドを組むことになります。

しかしアメリカ企業の個別株オプションはほぼアメリカンタイプのオプションになりますので、銘柄分散としてデビットスプレッドを採用する際には選択肢の幅が狭まってしまいます。

もう一つの解決策としては、インザマネーにならない戦略を組むと良いでしょう。

権利行使価格が、充分に原資産価格から遠ければ、仮に自分の権利行使価格に近づいてきたとしても対処することが出来るようになるかもしれません。

また権利行使されないうちに反対売買することも有効です。
しかしその場合はデビットスプレッドが最大利益に近づく満期直前で閉じる必要があるため、最大利益は取れないことに注意しないといけません。

例外は100株のポジションを保有しても構わないだけの資金量があったり、株保有後のポジション調整により他の戦略に移行できる場合はあえて割り当てを受けて株を保有しても良いかもしれません。

まとめ

アメリカンタイプの取引の問題点は売り玉の権利行使で現物株ショートポジションに変わります。

よってデビットスプレッドのようなインザマネーになって利益が出る戦略では、権利行使される可能性が高いことを理解する必要があります。

アメリカンタイプとヨーロピアンタイプ、決済タイプの違いを理解して適切な銘柄と戦略を選択するようにしましょう。


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