米大統領選ドローダウンでも20万稼げた先物ロング&オプション戦略

投稿者名:金森 雅人

右のチャートは2016年11月のアメリカ大統領選の時の日経平均株価の値動きです。

トランプ大統領に決まった11月9日には大きく下落し、翌日に前日の下げを帳消しにするような上昇となりました。

あなたはこのような「行って来い」の相場に振り回されない投資法をご存知でしょうか?

それがオプションを使った投資スタイルです。

オプションを利用したたため動揺せずに投資を継続できますので、このような急下落急上昇する相場でも、相場の方向性を予想する日経225miniをロングして20万円の利益をあげることができました。

その際に利用したオプションは、2種類の銘柄を利用しました。

1つ目がロスカットラインを17125円に設定できる11月限P17125を買うプロテクティブプット。

2つ目がプットの保険コストを賄うために利食いラインを17625円に設定できる11月限C17625を売るカバードコール。

オプションを利用することで、投資エントリーの際にあらかじめ損切りラインを決めておくことができます。

その結果相場が急変しても慌てることなく投資を続けることが出来ますし、そのための保険のコストを別の保険を売って回収することが可能となる戦略です。

このようなオプションを使った投資スタイルを学んでみませんか?

今回の事例のように組み合わせて取引できるのがオプション活用法の醍醐味であり、この戦い方なら急変相場に惑わされない投資を実現できます。

保険を掛けるプロテクティブプット

プロテクティブプットとは、プット買いの事を指します。

原資産(今回の日経225先物mini)を保有していて株価が下落した時に、miniの損失を完全に補填してくれるプットオプション買いのことをプロテクティブプットと呼びます。

プロテクトするという意味からも分かるように、フルヘッジされている状態である必要があります。

miniが100万円損失をだしたらオプションは100万円利益になって、相殺すると損益がプラスマイナス0になるようなヘッジをフルヘッジと呼んでいます。

フルヘッジというのはminiがいかなる価格になっても完璧にヘッジされている状態を指しますので、仮にminiが200万円の損失になってもオプションから200万円の利益が出るので相殺される状態です。

ただしオプションを買う場合は最初に保険料としてプット買いのコストを支払っていますので、フルヘッジが実現したとしても買いコスト分はマイナスになります。買いコストを差し引いた分は完全にヘッジできている状態になります。

このようにフルヘッジになるオプションは、ロスカットに利用することが出来ます。
オプションの権利行使価格以下になれば完全にフルヘッジできているので、指値のロスカットと同じように損失の下限を設定しているのと同じ効果があります。

この場合はオプションは1000倍でminiは100倍なので、オプションでフルヘッジを実現するためにはminiを10枚買っている必要があります。

miniが1枚ではオプションのヘッジが過多となるからです。

保険料を回収するカバードコール

カバードコールとは、コール売りを指しています。

原資産(今回の日経225先物mini)に対して、上昇の無限の利益を放棄して有限にする代わりに、オプションの保険料を最初に受け取る戦略です。

仮にminiが100万円の利益を出してもオプションが100万円の損失を出すことで相殺されます。
利益は限定になりますがコール売りのオプション料を先に受け取っていますので、その金額は利益として残ります。

つまり上昇した際の利益を諦める覚悟があれば、コールを売って先にオプション料を受け取ることが可能となります。

プロテクティブプットはオプション料を支払ってフルヘッジできたのに対して、カバードコールはオプション料を受け取って上昇方向の利益をコール売りで相殺する戦い方となります。

カバードコールは、利食いの効果があります。
最初に「もしいくらより高くなったらその上昇分の利益は放棄する」ことを決めているので、利益を確定させる利食いと同等の効果になります。

オプションは1000倍でminiは100倍なので、フルヘッジを実現するためにはminiを10枚買っている必要があります。

プロテクティブプットとカバードコールを組み合わせたトレード事例

このプロテクティブプットとカバードコールで利益を出した戦い方の事例を紹介します。

今回の事例は、普通の個人投資家であるKさんが、上昇トレンドフォローの先物ロングポジションにコール売り+プット買いを追加することで安心して想定通りの利益を出した事例となります。

Kさんは証券投資にまわせる資金が約500万円あり、株式投資は3年以上あります。先物オプションに関しては10年以上の経験があるベテラン投資家となります。

ですので今回のようなオプションを2枚以上組み合わせて取引することも何度も経験がありました。

彼の相場観としては、2016年10月26日に

アメリカ大統領も順当にヒラリーさんだろうし、このまま上昇トレンドが続くだろう。この場合は先物ロングで利益を大きく伸ばそう。だいたいの利食いターゲットは17,625円あたりかな。

というように考えていました。

この時の心境としては、

大統領選も順当にいけば現在のトレンドが続くだろうからその場合は先物でロングすれば利益を狙える。

しかし決まるまでは開票具合によっては株価がぶれることも充分考えられるので、利食いの指値(リミット)とロスカットの逆指値(ストップ)は置いておきたい。

途中の相場の需給による上げ下げのノイズに翻弄されたくないので今回はオプションをつかってみよう

と考えました。

その際のオプション銘柄は、ロスカット水準のプットオプションを買うプロテクティブプットと、利食いターゲット付近のコールオプションを売るカバードコールです。

方向性を予想するminiをロングして、プロテクティブプットで保険を掛けつつカバードコールで利益を固定する作戦が今回Kさんが取引した内容となります。

銘柄選定の目安と相場観

では相場観と利食い・ロスカットのバランスをはかっていきましょう。

Kさんがエントリーを考えていた時点での11月限日経225先物miniは17,365円でした。

この時のロスカットラインを17,125円に設定し、利食いラインを17,625円としてポジションを建てます。

プロテクティブプットによる損切りラインの決定

Kさんの投資判断としては、上昇トレンドフォローを先物miniで狙いたいと考えており、投下資金100万円程度と考えていて、その中で最大許容できる損失としては25万円程度までに設定したいと考えていました。

ここでKさんはオプションでヘッジをしているので、日経225先物miniは10枚ロングしていますので、最大損失額から逆算していくら日経平均株価が下落すると25万円の損失になるのかを計算できます。

mini10枚の場合は、17,365円から250円分安い17,115円にロスカットラインを設定すればよいかとが分かります。

miniは100倍単位で、10枚保有しているので1000倍相当です。
25万円の損失が発生するには25万円÷1000倍=250円と計算できます。

オプション銘柄を見ると11P17125という銘柄が140円で取引できそうなので、この銘柄を買うことに決めました。

カバードコールによる利食いラインの決定

次に利食いラインの決定です。

利食いラインは最大許容ラインと同程度の25万円の利益に設定しました。
よってプットの検討と同じく、現在の水準の250円程度上の権利行使価格のコールを売ることにします。

オプション銘柄には11C17365が110円で取引されているので、この銘柄を売ります。

リスクは17365円から17125円の下落分のみ

この戦い方のリスクは、現在の日経225miniに対してプロテクティブプットの保険が効きはじめる価格まで下落した分の損失のみになります。
つまり17,365円から17,125円までの下落分となります。この240円分が引き受けているリスクとなります。

17,125円以下になればプロテクティブプットの保険が効きますので、このプットの権利行使価格よりも下落した場合には、プットオプションがフルヘッジされるので損失が発生しません。

このように最大損失が240円で損失限定になっているから安心感があるのです。

オプションで実現することのメリットはリスクコントロール

通常、日経225先物miniを投資する際には利食いは指値売り注文、ロスカットは逆指値の売り注文をセットしておきます。

これで利食い・ロスカット注文は入っていますので、オプションを使う必要が無いように見えます。

ですが発注条件を用いた際に避けがたい問題があります。

それは、冒頭に紹介したトランプ大統領誕生の瞬間に一気に日経平均株価が下落すると、ロスカット注文が発動して決済注文が通ってしまうのです。

逆指値注文は相場の変動を察知して「miniの価格がいくらになったら売り注文を発注する」という命令を出しますので、今回のようなトランプ大統領誕生の瞬間などは、日経平均株価がオーバーシュートしてしまうこともあります。

例えそれが一瞬だとしても、機械的に日経平均株価の値段を見て注文を出すかどうか決めていますので、下落した瞬間に注文が通ってしまいます。

当初は上昇目線で考えていたとしても、この逆指値ロスカットに引っかかってしまったら投資は終了です。

ロスカットを発動しているので、損失が出て終了になるのですが、もっとも避けたいのがロスカット注文が通って損を固定した後に、株価が急回復して値段が戻ることです。

こうなってしまうとロスカットしなければ良かったということになります。

このトランプ大統領選の場面はまさにそのようなロスカットが約定した後にすぐにもとの株価に戻っている現象なのです。

逆指値でロスカットを行っていた場合は、この一時的下落のタイミングだけ都合よく逆指値注文を解除しない限り、やり過ごすことは不可能です。

だからオプションを利用するしかないのです。

オプションを使うことのメリットは、一瞬のドローダウンなどに一喜一憂しなくてすみます。

なぜならオプションは満期があります。満期まではいかなる価格であっても最終的な価格は満期日に決まるため、トランプ大統領選当日と翌日に相場を見なくても、自ら入れたヘッジポジション以上の損失は出ないので安心して見ていられるのです。

ここで注目したいのがプットオプション買いで支払う保険料の一部を、カバードコールを売ることで回収できているという点です。

このように銘柄を選べばプットを買う保険料を安く済ませることが出来ます。

想定利益の計算と実際の相場の結果

Kさんの最終結論としては10月26日引けにかけて

(1)11月限日経225miniを17,365円で10枚買う。

(2)利食いラインの11月限C17625を1枚110円で売る。

(3)ロスカットラインの11月限P17125を1枚140円で買う。

このように設定しました。

Kさんのもくろみとして、11月上旬に17,625円あたりで着地すると考えた場合には、損益予想は3種類の銘柄ごとに計算すれば求まります。

(1)11月限日経225先物mini=+260,000円

(2)11月限C17625売り=+110,000円

(3)11月限P17125買い=-140,000円

よって260,000円+110,000円-140,000円=230,000円を利益として見込めます。

その詳細を説明します。

(1)11月限日経225miniの損益額

(SQ値-エントリ価格)円×1000倍によって表されるので、(17,625-17,365)円×1000倍=260,000円となります。

(2)11月限C17625売りの損益額

支払額+売り受取額で計算されますが、SQ値-権利行使価格が0以下の場合は支払いは発生しません。今回の想定である17625円は権利行使価格の17625より低いので、支払いは発生せず、(SQ値-権利行使価格)円×1000倍+売り受取額=(17625-17625)円×1000倍+110,000円=110,000円と計算できます。

(3)11月限P17125買いの損益額

受取額-買い支払額で計算され、権利行使価格-SQ値が0以下の場合は受取が発生しません。今回の想定である17625円は権利行使価格の17125よりも小さいので受け取りは発生しません。
よって(権利行使価格-SQ値)円×1000倍-買い支払い額=0円×1000倍-140,000円=-140,000円となります。

行って来い相場でオプションによって安心を得られた

ヒラリーさんが順当に当選すると見られていたのですが途中結果を見ると拮抗していて、最終的にはトランプさんに決まりました。

ちょうど日本時間の午前中、日本市場が開いている時にリアルタイムで開票結果が報道されていたので、選挙の情勢が株価に反映されてトランプ大統領誕生が決定した時に株価が大きく下がりました。

ですが、翌日急回復して何事も無かったように株価が上昇していきました。

トランプショックで一旦は大きく下落、翌日大幅上昇とジェットコースターのような相場。
しかし結局は予想通りの着地(SQ17,596円)でした。

Kさんのトレードの結果は

(1)11月限日経225先物mini=+231,000円

(2)11月限C17625売り=+110,000円

(3)11月限P17125買い=-140,000円

実利益=231,000円+110,000円-140,000円=201,000円と、ほぼ想定どおりの利益を得ることが出来ました。

想定は日経平均株価が17,625円あたりで終わるだろうと予想していましたが、実際は17,596円となりましたので、若干利益が減っています。

しかし上昇するであろう相場観に対してトランプショックでふるい落としがあった状況であることから考えると、ロスカットをせずに見事利益を上げられたのはオプションの特徴を活用していたからになります。

まとめとデビットスプレッド

日経225先物miniとプロテクティブプットとカバードコールの組み合わせで、損失を限定しつつ上昇方向の相場観を反映した戦い方が実現できます。

単純にプット買いだけを行っていた場合は14万円の保険料が必要となるところ、プットを買うのと同時にコールを11万円で売っているので、合計3万円まで保険料を下げることに成功していました。

その際のコールのリスクはありません。なぜなら上昇した際の利益を放棄することで先に受け取っているからです。

この際にコールだけ売っていたら売っている権利行使価格以上に日経平均株価が上昇すると損失になりますが、先物がその損失をすべてカバーするので、コールの権利行使価格以上は損益は変化しません。

つまりコールの権利行使価格に通常の発注方法の利食い指値注文と同じ効果になります。

しかも通常の指値と異なるのは、オプション料を受け取るので、より有利に戦えるという点にあります。

日経225先物miniを買ってコールを売れば指値の利食い注文と同一の効果が期待できてかつ受け取りオプション料もある。
これで安心して相場の上昇を狙いに行くことができます。

もし、プットオプションの買いではなく、先物でロスカット逆指値を17,125円に設定していたとしたら、トランプショック(相場急落時)でロスカット発動されていたでしょう。

その場面をプットを買うことでヘッジを掛けつつロスカットを避けていたので、翌日の大幅上昇で含み損を消すことが出来ました。

実はこの戦いと似ているトレード方法があります。

それがデビットスプレッドになります。

今回の日経225先物miniロング+プロテクティブプット+カバードコールという3種類の銘柄を2種類で実現しているのが、デビットスプレッドになります。

今回の事例に当てはめるなら、C17125を買い、C17625を売る戦い方がデビットスプレッドです。

デビットスプレッドの活用事例についてはデビットスプレッドでトレンドに乗り遅れても39万円稼いだ事例を参考にしてください。

今回日経225miniを使った事例とコールだけのデビットスプレッドでは戦い方が異なるように見えますが、本質は同じ戦い方であり、相場が上昇する方向を利益に変えようとする戦略となり損益グラフも同一となります。

また、デビットスプレッドの場合はコールの買いオプションとコールの売りオプションは同枚数で済むので分かりやすいですが、今回の事例のように日経225先物miniを保有する場合は、日経225先物miniは100倍、オプションは1000倍の倍率になっていますので、日経225先物miniを取引する場合は10枚を1セットとして取り組むと良いでしょう。

以上の内容は下記の動画から引用していますので、この戦略を採用する際に注意点については動画で確認してください。

掲載:日本取引所グループ公式youtubeチャネル

上記サイトにて他の動画も閲覧できます。

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

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