デビットスプレッドでトレンドに乗り遅れても39万円稼いだ事例

投稿者名:金森 雅人

今年の10月は衆議院解散と世界同時株高が重なって日経平均が16連騰を記録しました。

そこで今後の日経平均の動向が気になるところですが、あなたは今から1ヵ月後に、再び日経平均が上昇を続けて今から1,000円も上昇すると思いますか?

もし上昇トレンドの最中だとしても、「さすがに1ヶ月以内に1,000円も上昇しないだろう」と考えられた時に、その1,000円を超えた分の利益を放棄するだけで、有利な取引を出来る投資手法をご存知でしょうか?

それがデビットスプレッドです。

デビットスプレッドとは、オプション取引手法の一つで、買いポジションと売りポジションを組み合わせることで、単純なオプション買いよりも低コストを実現し、相場の方向性を狙い利益を得るポジションを取ることができます。

この際にコストを下げるのは売っているオプションプレミアムです。上昇した分の利益を放棄することで購入代金を下げられるのです。

05C14000を20万円で買えるので、このコールオプションを買う場合は購入代金は20万円必要ですが、同時に9万円の価格がついている05C14500を売ることで9万円を受け取れるため、トータルの支払いは11万円に抑えることが出来ます。

最大損失額はこのポジションを組成するために支払った11万円で限定されていながら、コールを買ったのと同じ利益を見込めます。

今回はこの買いと売りを組み合わせたコールデビットスプレッドによって、1ヶ月で39万円稼げた事例を紹介します。

最大損失を減らして低コストでポジションを取れる方法を身に付ければ、あなたも相場観を入れながら自由にオプション戦略を組み立てられるようになりますよ。

最大損失額を低く抑えて相場観を反映できるデビットスプレッドの事例をぜひ学んでください。

コールオプション買いは上昇狙いで損失限定に出来る

今回の事例では黒田バズーカで相場が強いことを確認してから、トレンドフォローとしてコールでビットスプレッドによって十分な利益を出した事例を紹介します。

今回登場するHさんは証券投資に回せる資金が約100万円程度なので、あまり売りポジションを持ちたくないと思っていました。ですので買い戦略で何とか利益を上げられる相場を狙っていました。

株式投資の経験はそれほど無く、オプション経験もまだ浅い方であり、売りポジションのコントロールにもまだ自信を持てていないようでした。

場面は2013年4月12日の状況は黒田バズーカにより市場が驚いて急騰した状況でした。

「黒田バズーカ第一弾!この日は買えなかったが、上昇が強いのでもっと上がるぞ。上昇狙いのポジションでいこう!」

このように考えたのは、黒田バズーカにより相場が上昇した後でした。

通常はこのような上昇相場を拾えなかった場合は、次に押し目が来るまで待ってから投資するのが定石です。

しかし「押し目買いに押し目無し」という投資格言があるように、押し目がいつ訪れるか分かりません。

さらには日本の投資家がロングポジションで利益を上げている状況で、自分だけがポジションを持っていないため利益を取りそこねている。こんな悔しさも感じていました。

実際に個人投資家Hさんの気持ちとしては、黒田バズーカの発表時の相場の強さには驚いたものの、上げ直後に入りたかったが下落を恐れるあまりエントリーに躊躇している状態だったので、コール買い戦略がいいと判断していました。

テクニカル分析ではボリンジャーバンドのバンドウォークが起きる気配がしていて、さらに上がるぞと思ってはいるのですが、もしかしたらここが天井かもしれないという思いも少しある。

上昇狙いだが先物を買う(ロングする)のは高値掴みになるかもしれないし、今が天井でここから大下げしてしまうのも怖い。

だから損失限定のコールオプションを買おう、と考えました。

相場観と支払額のバランスを改善するデビットスプレッド

2013年4月12日の日経平均は13,495円程度でした。下記がその時のオプション価格一覧表になります。

赤枠で囲んだ5銘柄を抽出した表です。

この時のオプションを見ると基準ライン(権利行使価格)よりも上で着地する確率が高いものは値段も高いことが分かります。

最大損失は10万円程度の銘柄が理想として銘柄を選んだのですが、05月限 C14500あたりなら10万円程度で買えそうに見えます。

ですが、現在の13,495円と比較するとC14500は非常に遠く到達しそうも無い印象があります。

コールオプション買いが利益になるには少なくとも日経平均が14,500円以上になってもらわないと利益にならないのですが、現在の日経平均株価は13,495円であり、C14500までには1,000円近く上昇する必要があるためかなり不利に見えます。

Hさんの投資判断としてては、更なる上昇を狙いたいが、損失限定にするためにコールを買いたいと考えていました。

投資資金として10万円程度の損失までは耐えられるが、10万円で買えるオプションがC14500まで離れてしまっているのでコールを買っても利益になる見込みが立たない。

これから上昇するだろうと考えていますが、14,500円までは行かないのではないかと感じているという相場観を持っていたので、もし14,500円までは行かないと感じるのなら、その相場観を反映すればいいのではないか。と考えました。

この相場観を的確に反映できるポジションがデビットスプレッドになります。

デビットスプレッドはコールを売ることで低コストを実現する

C14500を買った時に利益になるためには少なくとも日経平均が14,500円以上になっていなければいけないので、逆の発想でC14500を売った場合は日経平均が14,500円以下であれば利益になります。

そこで、05月限C14000あたりを買って、05月限C14500を売れば、支払いは10万円程度で済むという戦略を思いつきました。

(1)満期⇒5月限(2013年5月10日満期)

(2)基準ラインを14,000円とする。

(3)10万円前後で買えるように工夫する。

上昇しても上限は14,500円あたりまでと想定することから、銘柄を05月限C14000買い(@200)と05月限C14500売り(@ 90)の組み合わせのデビットスプレッドとしました。

SQ時の損益計算

5月上旬に日経平均が14,500円あたりで着地すれば、損益予想はとしてSQ時の受取額は、5月限C14000のSQ決済受取額=(14,500-14,000)円×1000倍=500,000円と満額の受取です。

一方で、売りオプションの権利行使価格ちょうどで終わっているので05月限C14500のSQ決済支払額=(14,500-14,500)円×1000倍=0円となります。

実利益は受取額-支払い額-購入時支払額で計算できるので、ポジション組成時の支払額を引けばよいことが分かります。

ポジション組成時の支払い額=110,000円
 (内訳)05月限C14000買い支払い代金=200,000円-05月限C14500売り受取代金=90,000円

よって実利益=500,000円-0円ー110,000円=390,000円

このように、5月上旬に14,500円あたりで着地すれば、390,000円利益になることが分かります。

万が一負けても111,000円の損失限定ポジションです。

Hさんの投資資金を10万円に納めたいという投資判断をほぼ再現できていることがわかります。

14,500円を超えた場合の利益は14,500円で終わった時と同じ

このデビットスプレッドは、05C14000の買いポジションと05C14500の売りポジションで構成されています。
05C14000の買いポジションの損益グラフはこのようになっています。

  

右側が日経平均株価の推移です。
日経平均が上昇すればするほど利益になることが分かります。

一方、05C14500の売りポジションについては、14,500円までは利益は一定になり、14,500円を超えると損失が出始めます。

この両者を組み合わせたのがデビットスプレッドです。損益グラフはこのようになります。

C14000の無限の利益が、14,500円あたりでC14500によって押さえつけられているのが分かります。

この損益グラフが実現するのは、C14000とC14500を同じ枚数だけ保有することで実現します。つまりC14500でフルヘッジしている状態です。

これが「14,000円を超えた分の利益を放棄する」という意味をグラフに表した姿となります。

もし日経平均が暴騰しても利益は限定

この戦略のデメリットは、利益額が限定になっているという点です。

もし仮に1ヶ月で2,000円や3,000円上昇する相場になった場合には、利益が限定されています。
先ほどの絵で、14,500円よりも右側(=日経平均が高くなった状態)は利益額が一定であることを示す水平線になっています。

もし2,000円上昇して日経平均が15,500円になったとすると、C14000買いポジションは大きな含み益が出ますが、C14500売りポジションは大きな含み損が出ます。

この含み益と含み損の量が、同じ枚数だけ保有していれば完全に一致するので、日経平均が14,500円以上になっても得られる利益は一定になります。

それがフルヘッジされているという意味です。

ですので、今後の相場観として日経平均がまだまだ上昇するだろうと思えばデビットスプレッドにする必要はありませんが、もし今後日経平均は上下の変動を繰り返して一方通行に上がることがなかなか無いと考えて、エントリー時に

「1ヵ月後に1,000円以上は上昇しないだろう。もし上昇してしまったらその分の利益は放棄してもかまわない」

という心境であれば、このようにデビットスプレッドにすることが有効な手段となります。

C14000を買うのに20万円かかりますが、C14500を売って9万円回収していますので、実質11万円でこのデビットスプレッドを組成することが出来ています。

実際の相場と損益結果は想定どおりに39万円の利益

実際の相場は、予想通り14,500円あたりまで上昇し、結局5月10日は14,602円となりました。

ではオプションの損益をそれぞれ見ていきましょう。

【5月限C14000買い】

(14,602(SQ値)-14,000(基準ライン))円=602円の受取があります。

オプションは1000倍なので、602円×1000倍=602,000円の受取となります。

C14000を建てるのに支払った購入代金は200,000円でしたので、C14000単体の利益は402,000円であったといえます。

【5月限C14500売り】

(14,602(SQ値)-14,500(基準ライン))円=102円の支払いがあります。

オプションは1000倍なので 102円×1000倍=102,000 円の支払があります。

C14500を建てるのに受け取った代金は90,000円なので、C14500単体の損失は102,000-90,000=30,000円となります。

よってC14000で402,000円の利益-C14500で30,000円の損失=390,000円の利益が最終的に残ったことが分かります。

なお、今回は別々に計算して損益を求めましたが、一緒に損益を計算してもかまいません。

C14000を買ってC14500を売っているので、この2銘柄からは602,000円-102,000円=500,000円の受取があることが分かります。

このときにポジションを組成した時の支払い代金は11万円でしたので、内訳としてC14000を買う金額が20万円であり、C14500を売った時に受け取った金額が9万円であることから差し引き11万円の支払いによってこのコールデビットスプレッドを作ることができている、と計算しても良いでしょう。

この組成時のコストを受け取りから引いた額である50万円-11万円=39万円が今回の実利益となりますので、単体ごとに損益を計算しても合計して損益を計算しても結果は一緒になります。

もしコール買いのみであれば40万円の利益

この計算から分かるように、C14500のコールを超えて相場が上昇したために、上値を押さえつけてしまった結果になりました。

もし相場の上昇が強いと判断してコール買いだけを保有していた場合を考えて見ましょう。

実利益は買いポジションの受取602,000円から当初支払額200,000円を引きますので、実利益は402,000円となります。
実際のデビットスプレッドは390,000円の利益だったので、実はもっと利益を伸ばせたということが分かります。

今回の結果では届かないだろうという14,500円を超えていたので、C14500を売るデビットスプレッドにしないほうが利益は大きくなった、ということです。

ですが、結果としては単純な買いポジションだけが良かったとなりますが、Hさんは最大損失を10万円以下に抑えておきたく、かつ14,500円を超えないだろう(14,500円を超えたらその分の利益は無くてよい)と考えていたので、この比較は実際に実現できなかったと思われます。

また、今回は相場観が当たり日経平均が上昇して利益が出ましたが、もし日経平均が下落した場合にはコール買いのみの場合は20万円の損失になります。
その最大損失額を、デビットスプレッドにしておくことで11万円の損失で抑えたと言ってもいいでしょう。

このようにリスクリターンのバランスで、中程度のリスクを取って中程度のリターンを狙うポジションがデビットスプレッドであるといえます。

まとめと注意点

デビットスプレッドにすることで買いコストを売りコストで一部を補って最大損失額を減らすことが出来ます。

買い枚数と売り枚数を一致させておくことでフルヘッジのポジションになるので損失は限定できます。

もし相場が予想よりも上昇した場合には売りオプションの権利行使価格を超えた分は利益に出来ません。

よって「届かないだろう」と思えるような権利行使価格を売る、あるいは買いコストをどのくらい下げたいかを睨みながら売り玉の権利行使価格を決めるのも有効です。

以上の内容は下記の動画から引用しました。

記事には書いていない注意点については動画で確認してください。

 

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

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