さて前回の質問はどうでしょうか?
簡単でしたか?
こんな質問でしたよね。
こういう前提条件で期近のコールを買って、
日経平均が9,000円から9,250円に大幅上昇したときの
損益分解です。
では答え。
【1】=B4*(D1-B1)=50*(9250-9000)=1250円
【2】=1/2*B5*(D1-B1)^2=1/2*3*(9250-9000)^2=93750円
【3】=B6=-3円
【4】=B7*(D2-B2)=1*(18-20)=-2円
このようになります。
ん!?
デルタから1250円って1000倍するから
125万の利益??
ガンマから93750円ってことは
9000万円も儲かっちゃうの???
この計算式、
なんかおかしいですよね!
大丈夫ですか?
同じミスをしてませんか?
どこが違うかわかりましたか?
正解は、日経平均の単位です。
何度も私がお伝えしているように、
デルタやガンマを100円当たりの損益としています。
だから9250円は、9.25として計算するんです。
では答えです。
【1】=B4*(D1-B1)/100=50*(9250-9000)/100=125円
(なぜなら私のサイトでは100円当たりの変動を計算するので)
【2】=1/2*B5*((D1-B1)/100)^2=1/2*3*((9250-9000)/100))^2=9.375円
【3】=1(日)*B6=-3円
【4】=B7*(D2-B2)=1*(18-20)=-2円
この考えだと、
デルタは最大が100になりますよ。
よく書籍では最大1としていますが、
私は100倍しています。
なぜこれをするかというと、
ガンマの数値がすっきりするからです。
今回のガンマは3でしたが、
100倍にしない値だと0.0003というように、
ガンマの大きさがイメージしにくいからです。
もちろん書籍に載っているようにデルタを0.5にしても、
当然ですが結果は一緒です。
【1】=0.5*(9250-9000)=12円
【2】=1/2*0.0003*(9250-9000)^2=9.375円
もちろんどちらが正しいとか
間違っているわけではなく、
どちらかで統一して理解すれば
応用はいくらでも効きますからね。
そして損益合計、つまりプレミアムの増減は
【5】=【1】+【2】+【3】+【4】
で表されます。
つまりこの変動で、
デルタからは125円利益が出て、
ガンマからは9.4円、
セータはコール買いなので-3円、
ベガはIVが下落したので-2円
全てを足して129.4円が
このトレードの損益変化になります。
デルタが50で日経平均が250円動いたら、
125円が利益になるのは分かりますよね?
実はこの場合は
デルタからの利益がほとんどを占めています。
こうやってどのリスク指標から
利益が出ているのかを調べるのが
損益分解というわけです。
■
じゃあもう少し例題を挙げてみましょう。
オプション戦略のほとんどは
デルタニュートラルにしているスプレッドです。
それであれば
デルタ分は0になるので、
損益=ガンマによる変化+セータによる変化+ベガによる変化
これだけになりますよね。
例えば
デルタ=0
ガンマ=5
セータ=-6
ベガ=2
というポジションを持っていて
日経平均が200円動いて
IVが1%上昇した時を考えてみましょう。
前日からの損益変動は、
ガンマ×1/2×(日経平均の変動)^2 + セータ×1日 +ベガ×IV変化
=5×1/2×2^2 + (-6)×1 + 2×1
=10-6+2
=6
よって前日から6円だけ上昇した、
ということが分かります。
このポジションで
1日200円の変動があると
6円上昇します。
これが日経平均が全く動かず、
それによりIVが-1%さがると
どうなるでしょうか。
ガンマ×1/2×(日経平均の変動)^2 + セータ×1日 +ベガ×IV変化
=5×1/2×0 + (-6)×1 + 2×(-1)
=-6-2
=-8
8円損失が出てしまいました。
じゃあサブプライムショックなど、
大幅な変動が起きた時にはどうなるでしょうか?
売り系のポジションとして
さっきと全く逆のポジションを持っていたとしましょう。
デルタ=0
ガンマ=-5
セータ=6
ベガ=-2
サーキットブレーカー発動なんてときは、
いったいどのくらい価格変動があるのか、
知っておかないと怖くてポジションを持てないですよね。
日経平均が1,000円下落、
IVが10%上昇したと考えます。
同じようにガンマを計算すると、
=-5×1/2×10^2 + 6×1 + (-2)×10
=-250+6-20
=-264
つまり1,000円の大暴落があって
IVが10%も急騰しても、
264円の損失で収まるんです。
264円の損失が多いか少ないかは
トレーダーの考え方次第ですが、
あらかじめ最大損失が分かっていたら
恐怖は和らぎますよね?
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こうやって4つのリスク指標について、
それぞれの損益を合計して算出するプロセスが
損益分解です。
ココが理解できると、
オプションプレミアムに与える
全ての要因を把握することができます。
つまり理論的に価格が計算されて、
この先の変動によって
どのくらい損益が出るか分かるんです。
そうすればオプションが
怖くなくなるはずです。
怖いだと感じるのは
最大損失が予想できないからであって、
こうやって損失が予測できるようになれば、
それは怖いかどうかじゃなくて、
リスクを取るかとらないかの選択だけになります。
実際のリスク指標と今の市況を使って、
いろいろ試してみてください。
ほとんど理論的に価格が動いているはずです。
たまに理論値から外れるときもありますが、
それでも大幅に外れるわけじゃなく、
想定の範囲内で誤差の程度で
外れるということが分かると思います。
損益分解については
理解できたでしょうか?