リバースカレンダースプレッドはIV上昇を狙える戦略

投稿者名:金森 雅人

あなたは、ベガショートポジションのリバースカレンダースプレッドは、IVの低下を狙うことしかできない戦略だと思っていませんか?

実はIVの上昇を狙うためにも使える戦略です。

私はGW前にリバースカレンダースプレッドを建てました。

期近の5P22000を155円で買い、期先の6P22000を405円で売るリバースカレンダースプレッドです。

GWの相場観としては、令和へのご祝儀相場で上昇するか、アメリカの市況によって暴落もあり得るのではないかと思って、どちらにしろIVが上がるのではないかと予想していました。

この投資の結果としては負けでした。

155円で買ったオプションを150円で返済したので5円のマイナス、405円で買ったオプションを455円で返済したので50円のマイナス、合計55円のマイナスでした。

エントリー時の日経平均株価は22250円付近で、本日の寄りつきは170円ほど下げた22080円ほどでしたので、リバースカレンダースプレッドのリスクカーブ通りに損失が出たように見えますが、私の狙いは期近のボラティリティがもっと上昇すると予想していました。

結果としてはボラティリティがさほど上昇せずに負けましたが、通常のセオリーであるボラティリティ低下局面ではなく、なぜこの予想でリバースカレンダースプレッドを組成したのか解説します。

リバースカレンダースプレッドとは

リバースカレンダースプレッドとは、期近を買って期先を売る、異限月間取引のことです。

私が組成したポジションの損益カーブは下図のようになります。

緑の線がこのポジションの損益カーブです。

そしてGW明け11日後の5月7日の予想損益カーブがこちら。

動きが無ければお椀の底が沈み込んで、損失が出ることが分かります。

今回は22080円付近でポジションを決済したので、損失が10万円近く出そうなポジションだったことが分かります。

通常のリバースカレンダースプレッドはベガショート=IV低下を狙う

通常、教科書的にはリバースカレンダースプレッドはベガショートポジションのため、IVが低下する局面でエントリーすることが望まれます。

オプショントレード普及協会が提供しているオプション投資家養成塾や、日経225オプション日帰り合宿でも、リバースカレンダースプレッドのエントリータイミングは、「期近のIVと期先のIVがシンクロして同時に低下していく局面」であると説明しています。

しかしながら、今回の相場では期近と期先のIVの水準に特異性がありました。

それを示すのが、PrizeのIVチャートです。

4月25日時点のIVチャートでは、期近のIV平均が10.54%と、期先のIVに対して極端に低下していることが観測できました。

期近と期先のIVが逆ザヤ状態のように、期近はIVが低下して、期先はIVが上昇する珍しい現象でした。

PrizeではIVの平均を出しているため個別のオプションのIVと厳密には異なりますが、それでも傾向としては期近IVが低い水準にあることが分かる局面でした。

期近のIVが上昇して期先IVが低下したら利益を見込める

そこで今回のリバースカレンダースプレッドを選定してみました。

損益グラフが表示されている画像をもう一度掲示します。

今度はギリシャ文字の数字に着目しましょう。

期近の5P22000 のオプションのベガは買っているので+15.96、期先の6P22000は売っているので-31.69です。

この両者を合計した-15.73が、このスプレッド取引全体のベガの値です。

しかし、IVの値はオプションごとに異なり、期近と期先でも値は異なります。

期近と期先のIVが同じように低下してく局面などでは有効ですが、今回のGW前のIVの様子を見ると、とても同様に低下していくようには思えません。

むしろ、期近の低下しきったIVが上昇して、期先の盛ったIVが低下するように見えませんか?

私のリバースカレンダースプレッドはこの相場観を基にして組成しました。

もし場が荒れたら期近のIVが上昇するかもしれない

GW中にアメリカ市況が悪くなり、もしGW後の寄りつきに株価が暴落して始まったとしたら、どうなるでしょうか。

SQまで1週間を切って暴落したら、そのまま下落するかもしれないので、低下しきった期近のIVは上昇するかもしれません。

ですが、期先のオプションは満期までまだ1か月以上あるので、それほど反応はしないでしょう。

4月末までのIVチャートの推移を見ると、すでにGWの波乱は織り込み済みであるかのように見えます。

IVが上昇した場面での損益計算

ここで、期近のIVが3ポイント上昇し、期先のIVが1ポイント上昇したことを考えてみましょう。

IV全体としては上昇しているような局面です。

期近のオプションのベガは+15.96です。

3ポイント上昇したら、損益は15.96×3=47.88です。

期先のオプションのベガは-31.69です。

1ポイント上昇したら、損益は-31.69×1=-31.69です。

合計すると、+16.19です。

 

IVが低下する局面で有効なはずのリバースカレンダースプレッドが、IV上昇の場面で利益を出せることが分かりました。

今回の計算は原資産価格の変動を加味していないので、実際はこの数字通りになるとは限りませんが、単純に教科書事例的にリバースカレンダースプレッドはベガショート戦略だからIV低下を狙うと覚えておくと失敗してしまいますね。

私のエントリータイミングではすでに期近IVが回復していた

私がエントリーしたのは4月26日でした。

Prizeでは終値の様子しかわかりませんが、すでにボラティリティが若干元に戻りつつあったと考えられます。

つまり4月25日に期近のIVが底を付けたときにエントリーをしていれば、損益はもっと改善できたかもしれません。

ただし、4月26日の時点でも期近のIVは低下していましたので、期近のIVが元に戻ることを期待してエントリーしました。

もし昨日のアメリカの市況を引きずって日経平均株価が-500円近く下落して始まっていれば、もしかすると期近IVが高騰して、冒頭のような損失は回避できたかもしれません。

 

ただ、私の目論見としてはGWに波乱があるか、もしなければ令和ご祝儀で上昇すると見込んでいたので、いずれにせよ相場観的には失敗でした。

なお、もしご祝儀相場で上昇した場合には、リバースカレンダースプレッドの損益グラフの特徴でお椀の底を駆け上がる方向に推移するので、含み益に転じていたかもしれません。

まとめ

IVは期近と期先で別の値を取るので、ベガを合算するのは期近と期先が同じようにIVの推移を見せる「シンクロ」した時だけです。

当然期近と期先だけではなくIVはオプション個々に独自の値を持っていますので注意しましょう。

この記事を読まれた方は、リバースカレンダースプレッドの期近銘柄を組む時期とはも併せてお読みください。

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

※当ブログは過去の市場分析と戦略案を検討するものでありますが、取り上げている投資戦略についてはシミュレーション上のものであり、確実にそのような結果が出ることを示すものではありません。また、相場状況によっては損失が出ていた可能性も十分にあり得ます。当該シミュレーション結果が解説の中で説明した戦略の優位性や利益を保証するものではありません。よって、その内容を将来に当てはめて利益が出ることを保証するものではありません。投資手法の有効性などにつきましては、読者の皆様において十分に内容をご精査いただき、商品の特性、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分にご理解いただいたうえで、ご自身の投資判断と責任でお取引いただくようお願いします。

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