銀価格が30%も値上がりした際にプット売りしにくい理由

投稿者名:金森 雅人

銀投資として銀オプションを利用した投資法を解説していますが、銀価格が上昇するとデメリットが生じます。

そのデメリットとは

  • 次のプット売りでの受け取りプレミアムが低くなる
  • プットの権利行使価格が高くなるので暴落時にカバードコールしにくい
  • 下落リスクが高まる

1つずつ詳細に解説していきますので、デメリットを引き受けられるなら、銀価格が上昇しても安心して銀投資に臨めるようになるでしょう。

1.プット売りの受け取りプレミアム

銀オプションを投資で最初にプットを売ることは、指値と同じ効果であるため銀現物を指値で待つのと同じ効果であり、かつプット売りの受け取りプレミアム分が利益になります。

このように普通に指値で銀の値下がりを待つよりも、プット売りを実行してプレミアムを受け取ったほうが有利になることが多いのです。

しかし、銀価格が上昇してしまうと、プットのプレミアムが下落します。プットは銀価格が下落するとそのプレミアムが高くなり、反対に銀価格が上昇するうとプレミアムが下落する性質があります。

よって、同じ権利行使価格で取引する場合には、銀価格が安いほうがプットのプレミアムが高くなっているのです。

現在の銀の価格は17.4ドルとなっています。年始は14ドルを割っていました。

2016年の銀価格の推移

この時にオプションプレミアム一覧をサクソバンク証券のサクソトレーダーで確認すると下記のようになっています。

オプションプレミアム一覧

アットザマネー付近である17.5ドルの権利行使価格のプット2017年3月29日限のプットを売る場合の受け取りプレミアムは1.6274ドルとなっています。

ここで、仮に1ドル銀価格が上昇したと仮定すると、このプットの価格は下落します。
イメージとしては、現在の銀価格が17.47ドルのときの権利行使価格16.5ドルのプットを見てみると、その差額の概算がつかめます。

16.5ドルの同限月のプットの受け取りプレミアムは1.1394ドルとなっていますので、差額は0.488となり、受け取りプレミアムが0.488ドル少なくなっていることがわかります。

このように、銀価格が上昇するとプットプレミアムが安くなります。

安くなるということは保有しているプットオプションのプレミアムが安くなるので、含み益になっているということであり喜ばしいことですが、問題は今のポジションではなく、今のポジションが満期を迎えて次のポジションを建てるときに、オプションプレミアムが安くなってしまっているという問題点があります。

同じ権利行使価格では受け取りが少なくなるので、たいていは権利行使価格を引き上げて受け取りを増やします。
ですがそのように権利行使価格を上げていくと、イン・ザ・マネーになる可能性が高まるとともに、次のカバードコールの権利行使価格にも影響をあたえることとなります。

2.カバードコールの権利行使価格

プットを売って権利行使された場合は銀現物(サクソバンク証券の場合は銀CFDロングポジション)を保有することとなります。

銀のロングポジションを保有した場合にはカバードコールを行うことが有効です。

カバードコールとは銀ロングポジションに対してコールを同枚数売ることを指します。
コールを売ることで、利益を限定(利益確定)にすることでコールオプションのプレミアムを受け取ることができます。

この時のコールオプションの権利行使価格を、銀価格に合わせて引き上げることで利益を得ることが出来るため、コールオプションの権利行使価格を高く設定しないといけなくなります。

銀価格が高くならないのであれば、コールオプションを売る権利行使価格も高くしないで済むのですが、あいにく銀価格が高くなると同じ権利行使価格では投資のリターンが損失で終わってしまう可能性もあるので、権利行使を引き上げて対応することになります。

3.下落リスクが高くなる

もし銀価格が徐々に安くなっていくなら、プット売りを行っていけば銀投資を続けられます。インザマネーになって割り当てられた場合にはカバードコールを実行していれば損失のない投資スタイルが完成します。

もし銀価格が暴落した場合には、もう底値だと思うほど下がりきってしまえば銀現物を放置して値上がりすることを待つこともできるし、安値でさらに現物を買い増すことも出来ます。

安値にいる間は、さらに暴落するという危険性は少ないです。(もちろん可能性がないわけではありません)
しかし、価格が高くなると、底値が切り上がっていないかぎりは元の価格に戻る可能性は充分にあります。

現在は17ドルあたりにいますが、年始は14ドルだったので、30%近くも上昇しています。

今から投資を開始した人にとっては17ドルは割安に感じるかもしれませんが、15ドルの時代を知っていると、
17ドルが「高いな」と感じてしまいます。

15ドルの価格帯があったことを知っていると、今の17ドルに切り上がった原因が特定できないかぎり、市場の需給等によってまた15ドルに戻る可能性もあると考えられ、上昇幅を打ち消す下落が起きかねません。

つまり価格が上がらないほうが、下落リスクも少ないので安心できていたのです。

投資スタイル

銀オプションのプット売りをしていると、15ドルくらいでウロウロしてくれるのが一番いいと感じられるかと思います。これは15ドルでプット売りを行っている人の心境でもあるでしょう。

今下手に上昇してしまうと、今売っているプットは消滅して利益確定しますが、次にプットを売るときに高値で売らないといけなくなります。

15ドルあたりにウロウロしてくれていたら、14ドルあたりのプットを売ってプレミアムを得ていればよかったのに、
これが17ドルまで上昇してしまうと、14ドルプットが売れない。

前述したプレミアムがほとんどついていない状態となりますので、その場合は16ドルプットを売らないといけなくなります。それを期待していないのがオプション投資になります。

普通の投資で、投資している対象の銘柄が値上がりして嬉しくないってことはほとんどないでしょう。値上がりしたら値上がり益を得られるから、通常は値上がりを期待して買います。

ところが銀オプションは、そうではないのです。

今のポジションはプット売りで値上がりしたら嬉しいですが、期になる1年後にさらに値上がりしていたら、
売るプットの権利行使価格が高くなるから、継続的に投資することを考えると嬉しくない。

そもそも値上がり益なんて期待してないのです。

銀オプションを扱う意義

値上がりを期待するなら、普通に銀現物を買えばいいところを銀オプションで取引する意味は、ここにあります。
大して値上がりしないし値崩れしない銘柄を見つけて、そのプットを売ることがこの投資スタイルの本質となります。

このような銘柄を探すことで、値上がり益を期待したり、万が一値上がりしたらどこで利食いしたら良いかなんてことを一切悩まなくていい、ほったらかし投資(メンテナンスフリーの投資)スタイルが実現します。

銀オプション投資セミナー動画完全版の特典であるコミュニティの中でも、「銀がいくらに上がるまでプット売りの戦略を続ける予定ですか?」というコメントが掲載されてましたが、売れるときには売り込めばいいというのが回答となります。

当然相場なので銀価格が下落することはあります。

下落しても大丈夫なようにハーフキャッシュを用意して取引すれば、よっぽど暴落がない限り不安はありませんし、もしそのような暴落を不安に思う場合はcash secured put writing、つまりフルキャッシュ用意しておけば、万が一銀の価格が0になっても、証拠金不足にはなりません。自己資金を失うだけで済みます。

銀の価値が0になるとは考えられない、というのが安心感の根拠です。

もし銀の価値が0になったら、買い占める人が多くいるはずであり、そのような人が多ければ需要が高まって価格は上がります。だからバランスが取れているというのが、現在の銀価格として現れています。

実需もあるし精製コストも考えれば、0にはならないと考えられています。

銀が値下がりすることのメリット

銀が下落すればするほど、価格が安くなればなるほど、プットのプレミアムは大きくなるから想定利益(実入り)が多くなります。
そしてインザマネーになって権利行使されてもカバードコールの権利行使価格も低く出来ます。
下がりまくったら後は上がるだけだと割りきって放置することもできるし、安値でさらに現物を買い増すことも出来ます。

銀の価格が上がらないということは、こんなに良いこと尽くめなのですが、徐々に価格が上がってきてしまうと、今から始める場合には売りにくく感じてきてしまう。

これまで安い時にプットを売っていた人は、含み益が多くなって、大喜びでしょう。しかし、あまりに高くなりすぎると、銀投資が続けにくいというジレンマに陥って、あまり高くならないで欲しいという感情が出てきます。

もし20ドルを超えたり、買い占めがあって暴騰してしまった日には、しばらく銀投資はお預けになってしまうかもしれませんね。だから銀の価格が高くなりすぎたら残念という、なんとも不思議な気分になります。

これは恐らくこの銀投資を実際にしている人しか感じない、奇妙な現象です。

 

まとめ

プットを売れるうちに売ったほうが良い。
銀価格が安ければいろいろ手が打てる。
高くなり過ぎたら銀投資を休むことも考えなければいけない。

このプット売りとコール売りについてはLEAPS取引で7ヶ月利回り31.7%を得た具体的手順でも解説しています。

 

 

 

 

※当ブログは筆者の個人的な見解を示すものにすぎません。掲載しているデータの収集とその分析についても、筆者の個人的な視点に基づく分析であり、その有効性を保証するものではありません。解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化している場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。また、本資料に含まれる記述や情報については十分精査しておりますが、その内容に関して筆者は一切責任を負いません。

※当ブログは過去の市場分析と戦略案を検討するものでありますが、取り上げている投資戦略についてはシミュレーション上のものであり、確実にそのような結果が出ることを示すものではありません。また、相場状況によっては損失が出ていた可能性も十分にあり得ます。当該シミュレーション結果が解説の中で説明した戦略の優位性や利益を保証するものではありません。よって、その内容を将来に当てはめて利益が出ることを保証するものではありません。投資手法の有効性などにつきましては、読者の皆様において十分に内容をご精査いただき、商品の特性、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分にご理解いただいたうえで、ご自身の投資判断と責任でお取引いただくようお願いします。

※株式取引(米国株式)、オプション取引(米国株オプション取引)においては、株式相場、為替相場の変動等によって損失が生じるおそれがあります。お取引に際しては、あらかじめお取引先の金融商品取引業者等より交付される契約締結前交付書面等を十分にお読みいただき、商品の性質、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分に御理解いただいたうえで、御自身の判断と責任でお取引いただきますようお願い申し上げます。
 

関連記事

   オプション取引に関する無料メルマガを購読できます    登録はこちら
TOP
TOP