
MNレシオの数値の変化による損益への影響は
$$損益=1000×原資産価格×(1-\frac{変化前のMNレシオ}{変化後のMNレシオ})$$
によって導けます。
おおむね0.1ポイント当たり9000円~10000円の間に収まる傾向にありますが、詳細に検証すると原資産価格の水準に関係していることが分かります。
MNレシオの損益を計算する過程を紐解くことで、その関係性を理解しましょう。
MNレシオの変動による損益を計算する
MNレシオが変化すると損益にどれだけの影響があるか、まずはMNレシオの数値ごとに計算してみましょう。
MNレシオ0.1の損益を計算する
それにはMNレシオが0.1ポイント変動した時の損益の計算方法を示します。
日経平均先物の現在値を16000円として、価格上昇幅を100円としたときにレシオが0.1ずれた時の損益を、それぞれ計算してみれば良いのです。
日経平均先物
時価総額の差額が利益になりますので、日経平均先物の時価総額は16000円×1枚×1000倍=16,000,000円です。
この先物を保有して日経平均株価が100円上昇した際の時価総額は、16100×1枚×1000倍=16,100,000円となります。
東証マザーズ先物
一方の東証マザーズ先物は、レシオが17.2ポイントだとすると、現在の日経平均先物価格から東証マザーズ指数先物が計算できます。
16000÷17.2=930.23円
レシオ売買にする際には時価総額を一致させる必要がありますので、東証マザーズ指数先物を17.2枚買えばよいことが分かります。
時価総額の差
よって東証マザーズ指数先物の時価総額は930.23×17.2枚×1000倍=16,000,000円
次に日経平均株価が100円上昇した際の東証マザーズ指数先物は、16100÷17.3=930.63円
時価総額は930.63円×17.2×1000=160,006,836円
この両者の差額が利益となりますので、
∴16,100,000-16,06,836=93164円
よって0.1ポイントずれるとおよそ93164円の損益変化があることが分かります。
0.2ポイントずれた時の計算
今度は同様の条件でMNレシオが0.2変化した時の損益を計算します。
日経平均先物の現在値を16000円として、価格上昇幅を100円としたときにレシオが0.2ずれた時の損益を計算します。
日経平均先物
日経平均先物の時価総額は16000円×1枚×1000倍=16,000,000円です。
日経平均株価が100円上昇した際の時価総額は、16100×1枚×1000倍=16,100,000円となります。
東証マザーズ指数先物
東証マザーズ指数先物は、レシオが17.2ポイントだとすると、16000÷17.2=930.23円となり、マザーズ先物を17.2枚購入します。
ここまでは先ほどと変わりません。
次に日経平均株価が100円上昇した際の東証マザーズ指数先物はMNレシオが17.4となりますので、16100÷17.4=925.29
時価総額は930.63円×17.2×1000=15,914,942円
時価総額の差
この両者の差額が利益となりますので、
∴16,100,000-15,941,942=185,057円
よって0.2ポイントずれるとおよそ185,057円の損益変化があることが分かります。
0.1ポイントの損益と0.2ポイントの損益の比較
結果を比較しましょう。
0.1ポイント=93164円
0.2ポイント=185057円
単純に0.1ポイント変化した時の損益を2倍した数値よりも、0.2ポイントずれた時の損益の方が小さくなる結果となりました。
つまり単純比例しているわけではいということです。
1ポイントずれたら931,640円の損益が発生する、ということにはならないのです。
なぜこのようなことが起きるのか、これまでの検証結果に基づいて公式化してみましょう。
MNレシオの変化による損益の公式
MNレシオの数値の変化による損益への影響は
$$損益=1000×原資産価格×(1-\frac{変化前のMNレシオ}{変化後のMNレシオ})$$
によって導けることを、これまでの計算式を応用して公式化していきます。
具体的には、日経平均先物の現在値をX、価格上昇幅をZとしたときにレシオが0.1ずれた時の損益を、それぞれ計算してみれば良いのです。
日経平均先物の利益
日経平均先物の現在値:X
Z円価格上昇した後の日経平均先物価格:X+Z
先物から得られる利益={(X+Z)-X}×1000円
東証マザーズ指数先物の利益
東証マザーズ指数先物の現在値はレシオが17.2とすると:X÷17.2
日経平均先物がZ円上昇し、レシオが0.1増加した際の東証マザーズ先物の価格:(X+Z)÷17.3
$$東証マザーズ先物から得られる利益=(\frac{X+Z}{17.3}-\frac{X}{17.2})×1000円$$
日経平均1枚買いに対して東証マザーズ17.2枚売り
レシオ売買をするので、ここで仮に日経平均を1枚買い、東証マザーズ先物を17.2枚売ります。
そうすると損益は以下のようになります。
日経平均先物の差額
{(X+Z)-X}×1000
∴1000(X+Z)-1000X
東証マザーズ指数先物の差額
$${\frac{X+Z}{17.3}-\frac{X}{17.2}}×17.2×1000$$
$$∴{\frac{X+Z}{17.3}×17.2×1000-1000X}$$
この合計が利益になりますので、
$$1000(X+Z)(1-\frac{17.3}{17.2})=1000*(X+Z)*(1-0.994)$$
仮に原資産が100円上昇した場合には1000*16100*0.006=96600円となります。
これで原資産価格の変動とMNレシオが0.1ポイント変動した際の関連性が数値化されました。
原資産価格の変動を排除
この式を簡素化する場合には、原資産価格の変動を排除して考えます。
すなわち、日経平均の変動が無く(Z=0)、レシオが0.1ずれた状態を計算すると1000X(1-0.994)という計算式になります。
これは原資産価格の変動ではなく、原資産Xに比例した式になります。
よって原資産価格の水準によって、レシオが0.1ずれた時の損益が変化することを意味しています。
日経平均が20000円の場合、MNレシオが0.1ポイントずれた時の損益変化は20000*0.006=120000円になることが分かります。
今回の式で原資産価格に連動して損益が変わるという点、そしてレシオの変化率によっても損益が変わってくる点(今回の記事では17.2→17.3と変化率は固定として算出)を理解しておきましょう。
レシオの数値が変わらない場合
なお、この式が意味することはもう一つあります。
1000X(1-17.2/17.3)がレシオが0.1ずれた状態の損益であるということを解説しましたが、ではレシオの数値に変化がない場合はどうなるでしょうか。
その場合は
$$1000X(1-\frac{17.3}{17.3})=1000X(1-1)=0$$
となりますので、レシオの数値が変化しない場合は損益は発生しないことが分かります。
日経平均先物価格が上昇しても、同じように東証マザーズ指数が上昇してレシオの数値に変化がないと、このレシオ売買では損益は発生しません。
その意味がこの計算式によって明確になりました。
式を理解する意味
この数値を理解していないと、MNレシオが17.2から17.3ポイントに上昇した際の利益(または損失)はどの程度になるのか把握することが出来ません。
損益を理解していないと、ロスカットや利食いのタイミングを逸してしまうことにもなりかねません。
また最大損失を計算することが出来ないようでは安心して投資することもできません。
取引する際にはしっかりと理解しておく必要があります。
まとめ
MNレシオの損益は
$$損益=1000×原資産価格×(1-\frac{変化前のMNレシオ}{変化後のMNレシオ})$$
で計算できる。
日経平均が16,000円付近にいるときは、およそ0.1ポイント当たり1万円弱となる。
この式はMNレシオに限定されません。
計算過程を見て分かるように時価総額を一致させてその時価総額の差を利益に変える戦略であれば応用できます。
よってNT倍率や他のレシオ売買でも活用可能です。