
LEAPS戦略で個人投資家が安定的に利益を上げるために最も重要な考えは、プットオプション売りを理解することです。プットオプションを売ることで、現物株の指値と同じ効果が期待でき、プレミアムゲインを得られるので有利です。
では反対側にいるプットオプションの買い手は、何を期待してプットを買っているのでしょうか。それは株価の下落に備えた保険を掛けています。買い手が保険を掛けたくてプットオプションを買い、個人投資家はそのプットオプションを売ることでプレミアムゲインを得ます。
もしプットオプションを売る個人投資家が一方的に有利であれば、買い手が存在しなくなり取引が成立しなくなるはずですが、実際には充分な流動性があり誰でもプットオプションを売ることが出来ます。
市場参加者がなぜプットオプションを買いたいと思うのかを理解することで安心してLEAPSに取り組むことが出来るようになるはずです。
保険としてのオプション
日経225市場と異なり、米国株オプション市場では非常に流動性が高く、権利行使価格が現在の価格から離れすぎていて到底起こりえないであろうオプションでも実際に取引されていることが散見されます。
この銘柄を取引している参加者は次のようなプレーヤーが考えられます。
- プレミアムゲインを取得するためにプットを売る参加者
- 現物株のヘッジにコストを掛けて保険効果を得るためにプットを買う参加者
前 者はオプションによってプレミアムゲインを取得するための個人投資家です。
後者は主に現物株の保有者です。
機関投資家や巨大なポートフォリオを組んで 運用しているファンド等が考えられます。
自らのポートフォリオを危険にさらすのを阻止するために、例え権利行使される可能性が非常に低いプットオプションでも、万が一を考えて 保険をかける=プットを買うことをする必要があります。
万が一でも起きては困る
彼らは万が一でも不利な状況が起こると、ファンドの解散や損害賠償など、損失を「万が一にでも起こさない」ように対処する必要性があります。
個人投資家であれば自らの投資資金を失って投資を終了することが出来ますが、機関投資家やファンドマネージャーは途中で降りるということが出来ません。
例え2ドルの株であっても、0.5ドルのプットオプションを買って保険を掛け、価値が0になった時にでも0.5ドル分の保険を掛けておかないとポートフォリオが健全に運営できないのです。
オプションが果たす機能
それぞれの立場によってオプションが果たす機能が異なります。
プットオプションを売る必要がある人と、買う必要がある人がそれぞれ大量に存在しているから、流動性が高まり売買が成立しています。
この現象は日経225オプションではなかなか目にすることが出来ない現象ですが、アメリカ株オプションではインプライドボラティリティが100%を超える銘柄も実際に存在しています。
多種多様な参加者
上記の他にもスペキュレーターやアービトラージャーのような考え方など、実に様々な考えを持ってこの市場に参加しています。
その中には必ずしもオプションに精通しているとは限りません。
現株のヘッジを目論んでいるプレーヤーにとってはオプションはただの保険であり、満期まで保有するのが当然の商品だと考えられています。
ギリシャ文字を活用して期中決済を考えているオプショントレーダーだけが参加者ではないのです。
そのような多種多様な参加者がいる市場においてオプションの知識を活用してオプション投資を行うことができれば、商品に精通している事によるアドバンテージは必ずあると考えられます。
オプションの知識が重要
LEAPS戦略で学んでおくべき、満期においてプットオプションが現物株に割り当てられる現象、割り当てられて現物株を保有した後に取れる戦略であるカバードコールが追加の証拠金が不要で資金を回収できることは、オプション投資 を知っているからこそ出来る手段になります。
その手段が多ければ多いほうが、今後の戦略のバリエーションが増えることは明白です。
また、LEAPSを手がけながらも、時にはより有利な投資を実現するために期中で決済する場合もあるでしょう。
その時にはオプションの知識があれば迷いなく投資が出来るようになります。
プットを売る意味
Apple株を事例に上げた7ステップの中では、100ドルの権利行使価格のプット(P100)を売っていました。
現在値が108ドルにあるので、このとき100ドルに指値して値下がりするのを待つというのが一般的な投資行動であり、株式投資家やFXトレーダーにもわかりやすい行動になります。
しかし、100ドルにまで下がってこないと、Apple株は取得することが出来ません。
株を取得できていないということは、投資を始められていない事になります。
もし株価がこのまま上昇を続けていく場合にはApple株に投資していないことになります。
そこでプットオプション(P100)を売る行為を用います。
このプットを売る行為は、満期までの期間内にプットの買い手による権利行使があれば100ドルでApple社の株100株を買い受けなければならないという保険契約をしています。
反対に、プットオプションの買い手は、100ドル以下に株価が下落した際に100ドルで売れる契約を買っています。
100ドルで売れるということは、株価が100ドル以下に下落した際の損失は全てプットオプションの利益で相殺されます。
これが保険の意味になります。
完全に保険が効いているので、100ドル以下になっても損失を被ることはありません。
この100ドル以下になって損失が出ないという契約を、プレミアム(=保険料)を支払って購入しています。
満期で100ドル以下にならない場合
では、もし100ドルを下回らないで満期を迎えたらどうなるでしょうか。
それは権利行使されずに権利が消滅します。プットを売った時に受け取ったプレミアムが利益として確定します。
100ドルを下回らないとこのプットの権利は意味をなしません。
もし100ドルを下回った時には、プットの買い手は100ドルで売ることが出来る権利を得て、現在値との差額を利益にすることが出来ます。
しかし現在の株価が108ドルから変わらない場合には、100ドルで売る事ができる権利より、108ドルで今売ったほうが高値を売ることができるので有利です。
市場は効率的により投資効果が高い方を選択するはずですので、100ドルで売ることが出来る権利はこの時点では無価値のものとなります。
ただし、このプットオプションが無価値であるかどうかは満期日に確定します。
満期まで残存日数が残っている場合には、もしかして100ドルを割り込むかもしれないという期待からプットオプションは価値が若干ながら残っている事があります。
この若干の可能性に価値があると考える投資家が、このオプションを売買するので価格が形成されています。
プットオプションの買い手
一方の買い手は、株価が100ドル以下にならなければ、プレミアムは掛け捨て保険と同じで失うことになります。
ただし保険の掛け手は保険が適用されて損失を回避するよりも、株の値上がり益を期待していることが大半なので、万が一の保険としてオプションプレミアムを支払って保険を購入しています。
まとめ
プットオプションの売り手は、株価が権利行使価格まで落ち込むことはないだろ、または下落しても現物株になれば保有Sるつもりでプレミアムゲインを狙っています。
プットオプションンの買い手は、保有している現物株が下落しては困るので、掛け捨て保険として買っています。
このように置かれた立場によって取引に対する思惑、利益を出したいのか損失を回避したいのかが異なります。
その思惑が複雑に絡み合って市場が形成されていて、個人投資家のボリュームをはるかに超える売買高によって価格形成されているのがアメリカ株オプション市場となります。