
9月20日にリニューアルする金オプションは、売買単位が100g単位になります。
100g単位のメリットとして、少額での取引が可能となり、さらにカバードコールを行いやすくなっていますので、始めやすいオプション投資先として注目を浴びています。
今回はこの2つのメリットと、日経225オプションと比較した金オプションの特徴を紹介します。
金オプションとは
金オプションとは、金標準先物を原資産とするオプションになります。
リニューアル前は1000g単位で権利行使形式がアメリカンタイプであり、現物受けする商品でした。
今回のリニューアル後の金オプションは、100g単位のヨーロピアンタイプ、差金決済となります。
それぞれの違いを整理してみましょう。
売買単位が100gとなるメリット
小口化
一番の大きな変化点はこの売買単位が100gと小口化されたことにあります。
これによって日経225オプションよりも小さい金額で取引することが出来るために個人投資家への浸透が見込めます。
海外の大口投資家や証券会社は1000gを継続してリニューアルを進めていたため、私がアドバイスをして個人投資家を呼び込むには100g化を提案し、実現に至りました。
成功したアメリカ市場を参考に
アメリカのオプション市場はほぼ100倍に統一されており、個人投資家が参入して世界有数のオプション市場となったのは小口化と100倍という小ロット化にあると考えています。
大口投資家は取引枚数を増やすことで1000g相当の金オプション取引ができますが、逆に100gで取引したい個人投資家には選択する商品が無くなってしまうことから、東京商品取引所内でも個人投資家を優先するために100g化を決断したのだと考えています。
100g単位では1口45万円
現在の金取引価格が1000gでおよそ4,500円だとすると、金標準先物は450万円の資金が必要です。
一方100g単位の場合は45万円の資金量となります。
東京商品取引所で上場している商品では、金標準先物が1000gとなっており、そのほかに金先物ミニが100g、限日取引である東京ゴールドスポット100も100gとなっています。
また金現物取引も100g化していますので、小口化の流れを踏襲したものと思われます。
このように小口化することで、個人投資家が参入しやすくなったことは確かです。
カバードコールが容易
オプションの戦略の1つにカバードコールという戦略があります。
この戦略はカバーと呼ぶ現物をヘッジする機能を、コールによって実現するという意味で、現物を1枚保有してコールを1枚売ることで上昇側は利益限定となりますがオプションの売りによってプレミアムを得られる方法です。
現物を1枚保有するために、従来は1000g必要だったので450万円かかりましたが(※証拠金取引の場合は450万円全て必要なわけではない)、100gになることで1枚45万円の自己資金で足りることになります。
よってカバードコールも非常に取り組みやすくなります。
日経225オプションとのサイズ比較
日経225オプションの場合はラージ1枚を保有してカバードコールを行いますが、16,000円の1000倍なので本来は1600万円の自己資金が必要となる戦略です。
ただし証拠金取引として1枚当たり80万円~100万円で取引することが可能です。
日経ミニの場合は、100倍なので160万円の自己資金が必要となるところが、証拠金取引で8万円~10万円を保有していれば取引することが可能となります。
これを金と比較してみると、金標準先物や金ミニ共に日経平均先物よりも必要な自己資金は少ないので、少額でも取引可能となることがわかります。
なお、証拠金については金先物、金オプションに関しては日経225オプションと同じSPAN証拠金算出のロジックを利用するため、売買高が小さいということはSPAN証拠金も小さくなります。
インプライドボラティリティ
日経225オプションの平均的なボラティリティは20%前後ですが、金オプションの場合は15~16%あたりに落ち着くと考えられています。
総じて日経225オプションよりボラティリティは低いものと考えられます。
実際の経験則としても、日経平均株価の変動よりも、金価格は動きにくいという感覚があるのではないかと思います。
このようにボラティリティが低いということは、短期的な価格の変動が起きにくいということなので、単純なオプション買い戦略は利益を出すの難しいかもしれません。
そこで金を保有している投資家は、前述したカバードコールのような戦略を取るのがお勧めと言えます。
ボラティリティが小さい意味
また、ボラティリティが小さいということは、そんなに動かないと市場参加者が考えていることの表れですので、価格がもみ合うときに有効なショートストラングルや、ショートストラングル+権利行使価格をさらに話したロングストラングル=コンドル を組むというのも戦略としては有効ではないかと考えられます。
このような戦い方はボラティリティが低い場面では受け取りは少ないですが、その代わり勝率が高く戦えるメリットもあります。
また、インプライドボラティリティが低いということはSPAN証拠金算出において有利に働きます。
金オプションと日経225オプションの比較
また、その他にも今回のニューアルで変更した内容を整理していきます。
権利行使タイプ
アメリカンタイプ
アメリカンタイプとは、いつでも権利行使をすることが出来るタイプであり、オプションの買い手は満期前に権利行使をすることで現物商品を保有することが出来る一方、オプションの売り手は必ず権利行使に応じなければいけないリスクがあります。
アメリカンタイプではオプションの売り手は、ITM(インザマネー)になった時に満期まで保有し続けられるとは限りません。
従来の金オプションはアメリカンタイプを採用していました。
ヨーロピアンタイプ
一方のヨーロピアンタイプは日経225オプションでも採用されている形式で、満期日まで権利行使をすることが出来ません。
満期日に自動で権利行使されますので、例えばITM(インザマネー)のオプションであっても満期まで保有し続けることが出来ます。
今回リニューアルの目玉となるのがこのヨーロピアンタイプを採用したことになります。
このヨーロピアンタイプは日経225オプションと同一になりますので、日経225オプション投資家を意識したものかと思われます。
決済タイプ
決済タイプは現受けする現物決済タイプと差金決済タイプがあります。
現物決済
現物決済は、例えば商品のオプションを売っている場合は、商品の現物をロングポジションで保有することになります。
その際に権利行使価格よりも値下がりしている分は含み損として計上しておきます。
損失を実現せずに含み損の状態で現物を保有し続けられるので、将来株価が上昇する、または一時的な下落でも回復するだろうと思える場銘柄の場合にはアメリカンタイプを選択しておくと実現損を計上しないで済むメリットがあります。
従来の金オプションはこちらの現物決済タイプです。
差金決済
一方の差金決済では、SQ日(満期日)によって損益を計算して実現損益を計上してポジションがすべて消滅する形式です。
この場合には現物商品を保有し続けることが出来ないので、もしアメリカンタイプのように商品を保有したい場合は、自らがロングポジションを市場で組む必要があります。
差金決済はSQごとに損益が決まるため、短期間で仕切って新しい気持ちで次の限月に取り組むことができます。
リニューアル後の金オプションはこちらの差金決済タイプを採用しており、日経225オプションと同様の仕組みとなります。
流動性について
日経225オプション投資家によっては流動性は期近に集中しているのが常識となっていますが、金先物は1年先に流動性があります。
東京商品取引所も証券会社も金先物の取引者がヘッジ手段として活用することを考えた場合にはオプションも1年先が最も流動性が高く、マーケットメーカーも期先に集中するのではないかと予測をしています。
しかし我々個人投資家によっての売買対象は期近になりますので、マーケットメーカーがサヤ寄せして期近を中心に価格提示をするかもしれません。
この流動性については実際に取引が始まった後に判明することになりますが、個人投資家としては期近だけを取引対象とするのではなく、1年先の期先をいかに売買して収益チャンスを作るかを検討すると良いでしょう。
まとめ
今回の金オプションのリニューアルは、日経225オプションの制度にかなり近づけて設計されていますので、日経225オプション取引になれた投資家は参入しやすいでしょう。
さらには小口化して資金量が少なくても始められるようになっていて、さらにはボラティリティも小さく値動きが小さい市場でもありますので、オプション取引の練習をするのにも向いている市場と言えます。